もう20年会っていないのですが、知り合いにS君という人がいまして。
ドラム叩いていました。
まあそうは言っても高校生の独学というやつなので、今思えば全くもって叩けてない。こう言うと可愛そうですが、早いこと言えば「ヘタクソ」と言うやつだったんですが・・・・・・
そんな彼が体験したらしいオカルト。
(すでに20年経過し私も記憶が飛び気味・まあ訳のわからん田舎の高校生の話ですので、話半分に聞いていいただければ・・・・・・・
後、見てきたかのように語る所は、記憶の補完と読みやすさを重視した結果です。気にしないでください。)
彼の実家は山間地で、本気でド田舎というやつでした。
話を聴くと、隣の家に行くまで歩いて5分以上かかるとか。
ただ、元々林業で飯を食っていた家で・家そのものは立派な和風建築で、離れも数件あり、その離れの1件に、小遣いで貯めて買ったドラムセットを置いて練習するのが日課だったそうです。
防音設備はないのですが、隣と離れているから近所迷惑なんて気にしねえ・家族が寝る時間までは練習し放題という環境・・・・・・なんだけど、今思うと全然ドラム上達してなかったなオイ(滝汗
ある雪の日、彼がいつものようにドラムを練習し、そろそろ家族が寝る時間だと思ってスティックを置いた時でした。
「ピシィ」
今思えばそれが始まりのラップ音だったと彼は言いましたが、総木造和風建築なので、気温と雪の湿気で木のきしみ音が出たと、何も考えずに自分も寝る準備をします。
「パキパキ」
また音が鳴りました。
木の枝を折るような音だったと彼は言っていましたが、外に誰かの気配もなく、「木のきしむ音にしちゃ変だけど、そう言う時もあるのだろう」と思って、気にも止めませんでした。
しかし、次の音はさすがに驚き、彼も変だと思いました。
「ドン」
何の音かわかりませんが、彼はバスドラが鳴った音のように聞こえたと言いました。
不審に思い、安物のドラムペダルの部品が壊れて、跳ね返ってドラムに当たったのか?と思いペダルを確認しましたが、特に変わった様子はありません。
気味の悪くなった彼はとりあえず急いで離れから出て、本宅にある自分の部屋へと駆け込みました。
翌日、たまたま土曜日で学校から早く帰ってきたので、近所に住む友人のT君(ただし、近所と言っても原付きで10分ぐらいかかるところに住んでいる)を連れて離れに入りました。
雪は公道には積もらず、T君もスムーズにS君の家についたわけですが・・・・・・・
T君は離れに入るのは久しぶりだったそうです。
高校が違っていると言うこともあったし、一緒に遊ぶ時は子供の頃と違って下山して街で遊ぶことが多かったので、数年ぶりに入ったわけですが
「いかん。
オレ無理。」
と言って、急いで外に出てしまいました。
S君としては、小さい頃は一緒にこの離れで遊んでいたこともあって、何が無理なのかわかりません。
問いただそうにも、ここじゃ嫌だと言って教えてくれません。
T君のただならぬ雰囲気に気圧され、仕方ないので近所の喫茶店に行くことにしました。
ちなみに、近所と言ってもその喫茶店は原付で15分はかかる所にあります。
席に座って、S君はあたりを見渡してこう切り出しました。
「お前、あの離れって、
御札貼ってなかったか?」
T君は子供の頃にその御札を見たといいます。
そう言えば、S君がドラムセットを入れるまではその御札は確かに貼ってありましたが、最近視界に入らないのに気が付きました。
「なんかさ、あの離れ、いるんだよ・・・・・・
黒い何かがいるんだよ・・・・・」
T君は実は見える人だったらしく、子供の頃から色んな物が見えていたそうです。
ただ、基本的に人畜無害なものばかりで、一度小学校の先生の前で騒いだら完全な変人扱いをされて親にソレ系の医者に連れていかれたため、何か見えても何も言わずに暮らしてきたそうで。
また田舎のことですので、そう言った知能・精神障害がある場合は極力隠すと言うきらいもあったので、家族以外は医者に行ったことも知らないと。
S君は「そんなアホな」と思いながらも、T君がいい加減な嘘を言う人間ではないと思っていたので半信半疑ながらも彼の言うことにいちいちうなづいてあげました。
・・・・・・・・
さてその夜。
S君は、いつものように
どうしようかと思っていた時、一緒に住んでいたお祖父さんが居間のコタツでテレビを見ていたので、思い切って聞いてみました。
ちなみにこのお祖父さんは林業で食っていた人で、もう引退しているのですが、当時でも森林組合の人達からある一定の尊敬を得ている「山の民」みたいな人でした。
「あの離れって、何かいるのか??」
S君がこう聞いた時、お祖父さんは少しびっくりした顔をしたそうです。
そして、S君を見つめて話し始めました。
(7もう20年も前の話なのでかなり私も聞いた詳細は覚えていないのですが)離れはまだ林業が盛んだった頃、お祖父さんのお父さんが林業仲間の為に作った飯場だったそうです。
ちなみにお父さんは林業もこなす大工だったので家を建てるなどお手の物・使った木も自分の持ち物と言うことで、材料費も人件費もいらない結構立派な家が出来てしまったわけで・・・・・・
お祖父さんが若い頃は、そこに林業仲間や大工達が数人集まって、ほぼ毎日どんちゃん騒ぎをし、そこで雑魚寝をしてまた仕事に行くという事が繰り返されていました。
そんなある日、林業仲間の一人がその離れで急死します。
雪の降る寒い日で、当時は心臓麻痺と言ったようですが今で言う心筋梗塞でしょうね・・・・・・・皆が寝静まった後に発症したようで、誰も気が付かぬまま帰らぬ人となりました。
ここまでなら不幸ながらも普通の話なんですが・・・・・・
で、そのお亡くなりになった方には、年の離れたとても綺麗な奥さんがいて、どうやらお腹に子供がいたと言う・・・・・
だからかどうかは知らないが、彼が亡くなってから、雪の降る寒い日は色々離れで異変が起きていたそうです。
離れで怪我をする人間は数知れず、ボヤ騒ぎも数回あって、かなり困ってしまったそうです。
きっと、奥さんと生まれてくるお子さんの事が心残りで地縛霊化してしまったようですね(汗
困ったお祖父さん達は、彼が信仰していたという高野山(あの時確かに彼は高野山と言ったけど、高野山の寺のどれか・・・・だと思う)まで行き、事情を説明した所、あるお坊さんが御札を1枚くれました。
それを、目立つところに貼っておけと言われたので、離れの目立つところに貼った所、異変は収まり、林業が廃れ、飯場が必要がなくなっても自分の家の離れとして使い続けているとのことでした。
「多分、その御札が無くなってしまったからだろうな。」
お祖父さんは遠い目をしながら話をしてくれましたが、S君からしてみたら地縛霊が闊歩する部屋なんかでドラムの練習はできません。
仕方ないので、意を決して離れのどこかに落ちているであろう御札を探すことにしました。
が、
探す前に、S君はあることに気が付きます。
S君には血のつながりのない伯父さんがいます。
なんでも、お祖母さんの連れ子で、まだお腹の中にいた頃に元の夫を亡くし、その数年後にお祖父さんと結婚したそうです。
お祖母さんは数年前に亡くなっていましたが、昔の写真はとても綺麗で、女優と言われても問題がないぐらいだったとか。
そして伯父さんは、S君のお父さんである弟の方が跡継ぎにふさわしいと言って、自分は下山して某大企業で働いています。
「あれ?」
「どうした??」
「なあ、オレの祖母さんって、その亡くなった人の奥さんだった人か?」
「ん?そうだよ。」
「そうだよって・・・・・・」
「まあ離れは元々お前の伯父さんが使っていたんだよな。
まあ伯父さん出てってからは祖母さんも中をよく掃除していたし、だから何もなかったと思うし、御札も大事に貼っといてくれたと思うんだけど、
言うの忘れてたわ。」
「・・・・・・・それ、御札関係あったのか?」
まあとにかくS君は我々に、このいい加減な祖父さんの事を怪談にかこつけて面白おかしく紹介してくれた訳で、多分彼が一番言いたかった事はこの部分だと思うのですけどね。
その後、どうやって口説いたかとか夜の営みが最高だったとかどうでも良い話をされたそうです。
多分祖父さんも寂しかったんだよ・・・・・・S君。
御札はどうやらドラム搬入時に落ちてしまったようで、ドラムセットの下敷きになっていました。
しかも結構シワクチャになっていたそうで、なんか有り難みもないからと後日伯父さんが高野山まで行って新しい御札を買ってきて、元貼ってあった所に貼り付けたそうです。
その時
「実は、お前がこの離れにドラムセット入れたいって言った時、弟(S君のお父さん)から相談があってさぁ。
入れても良いか?って言われたんだけど、いやーもうオレもいないし、祖母さんも死んじゃったから、親父が寂しがるかなぁっと思ってドンドンやれって言ったんだよね。
血のつながりがないとは言え、祖母さんの孫なら問題ねえだろっと思ったけど、
やっぱりダメだったか。」
みたいな事を言われたそうです。
なにがダメだったのかよくわからないけども、聞くのが怖くて何も聞かなかったとのこと。
そんなこんなで結局地縛霊騒ぎは収まったそうですが、さすがにそこでドラムの練習をする気も置きず、その後はしばらく叩いていない・・・・・・・・
と言うオチで話は終わりました。
高校卒業してからS君とは会ってませんが、どうしているんでしょうね。
あいつ、元気かなあ。
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